電子帳簿保存法とは
電子帳簿保存法の概要と改正ポイントを解説いたします。
各税法で原則紙での保存が義務付けられている帳簿書類について一定の要件を満たしたうえで電磁的記録(電子データ)による保存を可能とすること及び電子的に授受した取引情報の保存義務等を定めた法律です。
経済社会のデジタル化を踏まえ、経理の電子化による生産性の向上、記帳水準の向上等に資するため、令和3年度の税制改正において、「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律(平成10年法律第25号。以下「電子帳簿保存法」といいます。)」の改正等が行われ(令和4年1月1日施行)、帳簿書類を電子的に保存する際の手続等について、抜本的な見直しがなされました。
電子帳簿保存法上、電磁的記録による保存は、大きく下表の①~③に区分されています。
電子帳簿等保存(区分①)に関する改正事項
1. 税務署長の事前承認の廃止
これまで、電子的に作成した国税関係帳簿を電磁的記録により保存する場合には、事前に税務署長の承認が必要でしたが、事業者の事務負担を軽減するため、事前承認は不要とされました。
※電子的に作成した国税関係書類を電磁的記録により保存する場合についても同様
※令和4年1月1日以後に備付けを開始する国税関係帳簿又は保存を行う国税関係書類について適用
※令和4年1月1日以後も改正前の要件を満たして保存等を行おうとする方が承認を受けようとする場合には、承認申請書の令和3年9月30日までの所轄税務署長宛の提出が必要(スキャナ保存も同様)
2. 優良な電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置の整備
一定の国税関係帳簿(注1)について優良な電子帳簿の要件(注2)を満たして電磁的記録による備付け及び保存を行い、本措置の適用を受ける旨等を記載した届出書をあらかじめ所轄税務署長に提出している保存義務者について、その国税関係帳簿(優良な電子帳簿)に記録された事項に関し申告漏れがあった場合には、その申告漏れに課される過少申告加算税が5%軽減される措置が整備されました。
※申告漏れについて、隠蔽し、又は仮装された事実がある場合には、本措置の適用はありません。
※令和4年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税について適用
(注1)一定の国税関係帳簿とは、所得税法・法次項目の人税法に基づき青色申告者(青色申告法人)が保存しなければならないこととされる総勘定元帳、仕訳帳その他必要な帳簿(売掛帳や固定資産台帳等)又は消費税法に基づき事業者が保存しなければならないこととされている帳簿。
(注2)次項目の電子帳簿の保存要件の概要の“優良”の要件をご確認ください。
3. 最低限の要件を満たす電子帳簿についても、電磁的記録による保存等が可能に
正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)に従って記録されるものに限られます。他の要件については、次項目の電子帳簿の保存要件の概要の“その他”の要件をご確認ください。
※令和4年1月1日以後に備付けを開始する国税関係帳簿について適用
電子帳簿の保存要件の概要
保存要件概要
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改正前
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改正後
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優良
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その他
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記録事項の訂正・削除を行った場合には、これらの事実及び内容を確認できる電子計算機処理システムを使用すること
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〇
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〇
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-
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通常の業務処理期間を経過した後に入力を行った場合には、その事実を確認できる電子計算機システムを使用すること
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〇
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〇
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-
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電子化した帳簿の記録事項とその帳簿に関連する他の帳簿の記録事項との間において、相互にその関連性を確認すること
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〇
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〇
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-
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システム関係書類(システム概要書、システム仕様書、操作説明書、事務処理マニュアル等)を備え付けること
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〇
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〇
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〇
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保存場所に、電子計算機(パソコン等)、プログラム、ディスプレイ、プリンタ及びこれらの操作マニュアルを備え付け、画面・書面に整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力できるようにしておくこと
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〇
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〇
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〇
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検索要件
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①
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取引年月日、勘定科目、取引金額その他のその帳簿の種類に応じた主要な記録項目により検索できること
»改正後、記録項目は
取引年月日、取引金額、取引先
に限定
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〇
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〇
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-
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②
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日付又は金額の範囲指定により検索できること
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〇
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〇※1
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-
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③
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二つ以上の任意の記録項目を組み合わせた条件により検索できること
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〇
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〇※1
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-
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税務職員による質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じることができるようにしていること
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-
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-※1
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〇※2
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※1 保存義務者が、税務職員による質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には、検索要件のうち②③の要件が不要となります(後述のスキャナ保存及び電子取引についても同様です。)。
※2 “優良”の要件を全て満たしているときは不要となります。
(参考) 優良な電子帳簿の要件を満たして対象帳簿の備付け及び保存を行い、前頁2の届出書の提出がある場合には、所得税の青色申告特別 控除(65万円)が適用できます。
電子帳簿の手続に関するQ&A
Q.新たに、対象の帳簿について電子保存を行う場合に、過少申告加算税の5%軽減や所得税の青色申告特別控除(65万円)の適用を受けるためには、いつまでにどのような手続が必要ですか?
A.適用を受けようとする初年度においては、その過少申告加算税の5%軽減や青色申告特別控除(65万円)の適用を受けようとする課税期間に係る法定申告期限までに、所轄の税務署長宛に、本措置の適用を受ける旨等を記載した届出書を提出していただく必要があります。
Q.これまで税務署長の承認を受け、総勘定元帳及び仕訳帳等の優良な電子帳簿の対象となる帳簿について電子保存していましたが、その場合でも届出書の提出は必要ですか?
A.過少申告加算税の5%軽減の適用を受けるためには、これまで承認を受けて保存等していた場合でも本措置の適用を受ける旨等を記載した届出書の提出が必要です。なお、令和4年1月1日よりも前に受けた承認の効力自体は取りやめの届出書の提出(又は税務当局からの取消処分)がない限り有効ですので、その承認が有効とされる間は、引き続き改正前の要件で保存等を行う必要があります。したがって、承認を受けていた方が令和4年1月1日以後に備付けを開始する帳簿について、改正後の要件に従って電子帳簿保存を行う場合には承認の取りやめの届出書の提出等の承認を取りやめる一定の手続が必要となりますのでご注意ください。
スキャナ保存(区分②)に関する改正事項
1.税務署長の事前承認の廃止
※令和4年1月1日以後に行うスキャナ保存について適用
2.タイムスタンプ要件、検索要件等についての緩和
1. タイムスタンプの付与期間が、記録事項の入力期間と同様、最長約2か月と概ね7営業日以内とされました。
2. 受領者等がスキャナで読み取る際の国税関係書類への自署が不要とされました。
3. 電磁的記録について訂正又は削除を行った場合に、これらの事実及び内容を確認することができるクラウド等(注1)において、入力期間内にその電磁的記録の保存を行ったことを確認することができるときは、タイムスタンプの付与に代えることができることとされました。
(注1) 訂正又は削除を行うことができないクラウド等も含まれます。
4. 検索要件の記録項目について、取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先に限定されるとともに、税務職員による質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じる場合には、範囲指定及び項目を組み合わせて条件を設定できる機能の確保(前頁帳簿の検索要件②及び③に相当する要件)が不要となりました。
※令和4年1月1日以後に行うスキャナ保存について適用
3.適正事務処理要件(注2)の廃止
(注2) 相互けん制、定期的な検査及び再発防止策の社内規程整備等のことをいいます。
※令和4年1月1日以後に行うスキャナ保存について適用
4.スキャナ保存された電磁的記録に関連した不正があった場合の重加算税の加重措置の整備
適正な保存を担保するための措置として、スキャナ保存が行われた国税関係書類に係る電磁的記録に関して、隠蔽し、又は仮装された事実があった場合には、その事実に関し生じた申告漏れ等に課される重加算税が10%加重される措置が整備されました。
※令和4年1月1日以後に法定申告期限等が到来する国税について適用
スキャナ保存の手続に関するQ&A
Q.これまで税務署長の承認を受け、スキャナ保存を行ってきましたが、今回の承認制度廃止に伴い、何か手続は必要ですか?
また、改正後の緩和された要件の下で保存を行っても問題ありませんか?
A.施行日(令和4年1月1日)以後についても引き続き承認は有効であり、承認の取りやめの届出書を提出する(又は税務当局から取消処分を受ける)までは、その後も改正前の要件を満たしてスキャナ保存を行う必要があります。
したがって、施行日前に承認を受けていた方が、施行日以後緩和された要件の下で保存を行う場合には、承認の取りやめの届出書の提出等の承認を取りやめる一定の手続が必要となります。
なお、施行日前に承認を受けていた方が、引き続き改正前の要件で保存を行うか、新たに改正後の要件で保存を行うかは保存義務者の選択となりますが、重加算税の10%加重措置については、施行日以後に法定申告期限等が到来する国税について適用されます。
電子取引(区分③)に関する改正事項
1.タイムスタンプ要件及び検索要件について次のとおりの要件の緩和
タイムスタンプ要件に係るタイムスタンプの付与期間及び検索要件に係る検索項目について 「スキャナ保存(区分②)に関する改正事項」の2(1)と(4)と同趣旨の改正が行われたほか、基準期間(注)の売上高が1,000万円以下である方(小規模な事業者)について、税務職員による 質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には、検索要件の全てが不要とされました。
(注)「基準期間」とは、個人事業者については電子取引が行われた日の属する年の前々年の1月1日から12月31日まで の期間をいい、法人については電子取引が行われた日の属する事業年度の前々事業年度をいいます。
※令和4年1月1日以後行う電子取引について適用
2.適正な保存を担保する措置として、次の見直し
1.申告所得税及び法人税における電子取引の取引情報に係る電磁的記録について、その電磁的記録の出力書面等の保存をもってその電磁的記録の保存に代えることができる措置は、廃止されました。
※令和4年1月1日以後行う電子取引について適用
※消費税における電子取引の取引情報等に係る電磁的記録については、引き続き出力書面による保存が可能です。
2.電子取引の取引情報に係る電磁的記録に関して、隠蔽し、又は仮装された事実があった場合には、その事実に関し生じた申告漏れ等に課される重加算税が10%加重される措置が整備されました。
※令和4年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税について適用
電子取引の保存要件
※下線を付した部分が、今回改正により変更があった箇所になります。
真実性の要件
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以下の措置のいずれかを行うこと
①タイムスタンプが付された後、取引情報の授受を行う
②取引情報の授受後、速やかに(又はその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに)タイムスタンプを付すとともに、保存を行う者又は監督者に関する情報を確認できるようにしておく
③記録事項の訂正・削除を行った場合に、これらの事実及び内容を確認できるシステム又は記録事項の訂正・削除を行うことができないシステムで取引情報の授受及び保存を行う
④正当な理由がない訂正・削除の防止に関する事務処理規定を定め、その規定に沿った運用を行う
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可視化の要件
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保存場所に、電子計算機(パソコン等)、プログラム、ディスプレイ、プリンタ及びこれらの操作マニュアルを備え付け、画面・書面に整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力できるようにしておくこと
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電子計算機処理システムの概要書を備え付けること
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検索機能※を確保すること
※帳簿の検索要件①~③に相当する要件(ダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には、②③不要)
保存義務者が小規模な事業者でダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には、検索要件不要
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上記の内容は国税庁が公開している『
電子帳簿保存法が改正されました』に基づきます。
また、申請書の様式や電子帳簿保存法のQ&Aについては、
国税庁ホームページに掲載されています(改正分は随時掲載されていきます。)。